嵐の前の静けさ
2-24話です。
はい、超えた後の話です。
前回の話はこちら↑
とっぷりと日も暮れたので、途中の駅まで送っていき、さき5は帰宅の途につきました。
別れ際、さき5はとても幸せそうな顔をしていましたが自分としてはとても複雑です。
してしまった事は、良くない事かもしれない。
だけど、川本・さき5の側から見れば、悪くない事なのかもしれない。
だけど、川本の彼氏から見れば、悪い事なのだろう。
自分の意見としては、どうなんだろう?
…正直分からない。
川本は、まだ結婚している訳では無いし、何より川本の希望であったし、と言う思いと、川本は多重人格者だし、と言う思い。
考えはグルグル回り結局答えは出てこないのですが、結果は結果として受け入れ、何があっても逃げずに対処しよう、と自分の中で結論付け、納得させました。
当日の夜、11時半頃にさき5がメッセンジャーで発言を送ってきました。
主に今日した事についての話をしたのですが、とにかく養成所でハードなレッスンの後にウチに来たので、明日は寝込む事は確定のようです。
今現在は、ちょっと辛い程度らしいので、安心と言えば安心ですが。
しかし、考えてみれば今月で、3回は出現している「さき5」。
「さき6は、本当に外に出たがって無いんだね」
「はい。お外が怖いって。」
「また出たいって思うようになるかな?」
「どうでしょう…同居人と一緒だったら出てくるかもですね。同居人にはなついてますから。」
少なくとも、自分と一緒の時にはさき6が出てくる事は無さそうです。
その日は疲れていると言う事で、早々とチャットは切り上げて就寝。
翌日には、川本に戻ったようで、昼過ぎにメッセージが届きました。
まずは世間話や、先日さき5に切り替わった時の話等をしていたのですが、暫くすると
「あのさ、昨日さき5とHしたでしょ?」
…ドキッ
としたけど、隠す意味も無いので肯定の返事。
「さき5喜んでた?」
「言わなくても分かるでしょ。」
「喜んでるだろうね。」
「うん。」
さも当たり前のように交わされる言葉。
ただ、こんな事をズルズル続けていても事態は良くならないと思うので、あういう事はこれっきりにしよう…と思いました。
「川本は、僕とHできる?」
別に誘っている訳ではなく、興味本位で聞いてみました。
「えーっ無理無理。」
即答。
「そんなに力いっぱい否定しなくとも…、じゃキスは?」
「無理無理無理」
安心したような残念なような気分です。
「人格が違うと、ここまで違うんだねー」
「そらそうだ。」
「…まぁ、川本がどう思っているなら安心だ。さき5が嫉妬する事もあるまい。」
「うむ。あ、明日演技のレッスンだから変えないでね。」
人格を変えないでね、と言う意味です。
「変えたくて変えてる訳じゃないわいっ、心配なら彼氏にも言っとけっ。この前は彼が原因なんだから。」
「うん、言っとかないと。」
それから二日後、深夜に再度さき5が出現してしました。
チャット仲間の心無い発言が元だったのですが、当の本人は出れて嬉しそうです。
その時は絵チャット中だったのですが、さき5は何を描いたらいいのか悩んだあげく、僕の顔を描き始めます。
マウスで描くので、それほど上手く描ける訳もないのですが描いているタッチは、まさに小学生高学年のような感じ。
どのような想いで、さき5はこの絵を描いているのだろう。
そう思いながらモニターを眺めていたら、うっすらと目に涙が溢れてきました。
恐惶謹言
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