その想いは忘却の彼方へ
2-40話です。
長々と続いた川本編完結です。
何を言っても信じてくれないので - クーロンの自分語りブログ
前の話はこちら↑
川本と会わない事にしたのは、色々と理由がありますが、少し距離を置いた方が懸命だと思ったからです。彼女もそれを察しているのか、会おうとは言ってきませんでした。
その後、川本の彼氏は仕事を始めましたが、川本の「自由」を認めないようになりました。「教育」と称して厳しい事を言う様になりました。
何とかしてあげたかったけど、愚痴りたいだけで助けを求めている様では無いようなので、聞き役に徹していました。
それから数週間経ち、携帯が鳴りました。
川本からです。
「どうした?」
「今日は良い天気だね。あのね、クーロン。もうクーロンとの関係を絶った方が良いかと思って。」
何か少し棒読みでセリフを喋っている様な…?
いきなりだったので、何の事やら分かりませんでしたが、サイン(天気)の事を思い出し、何か裏があるんだなと思いました。
「…いきなりだなぁ、なんで?」
「うーん…お互いの幸せの為に。」
「…うん、分かったよ。幸せになってね。」
「あははw うん、クーロンもね。」
そして電話を切りました。
数分後に川本から携帯メールが届き、さっきの電話は彼に言わされていた事が書いてありました。携帯にイヤホンを繋いで会話の内容を聞いていた様です。
迂闊な事を喋らなくて良かった…よほど向こうは荒れているんだろうけど、しばらくは余計な事を言わない方が良いだろう…そうすれば彼も安心できるに違いないし。
それからチャットサイトは、受験生だった子達が新しい環境になったり、東京を離れ実家に帰る事になった子がいたり、少しずつ人も減ってて、メッセンジャーで個々に話す様になりました。
ひとまず、過去話はここで区切りとして、ここから10年程度の間に起きた事を簡単にまとめます。
その後の川本は、養成所のハードなレッスンに付いていけなくなったり、友人関係でストレスを溜めていたようで体調を崩し、養成所を辞める事になりました。
その結果かどうかは分かりませんが、新しい人格が発生しました。
とてもサバサバした口調で「川本」から分離したので、「川本2」です。
それから数年後に、近況を聞いたら落ち着ているそうなので、会う事にしました。
数年ぶりにあった彼女は雰囲気ががらりと変わっていて、すごく落ち着いていましたが…、自傷行為を何度かしていて、左手首に大きな傷跡…。ホッチキスの様な物で傷口を塞いでおり、左手が麻痺してリハビリ中でした。
その日は喫茶店で会って近況を聞いただけでしたが、その後またチャットがしたいと彼氏に言い出したようです。その結果、彼氏からメールが来ました。
あんた彼女と会いましたね?
チャットをやりたいと言い出したんだけど。
なんで俺の彼女に会おうとすんの?
俺の人生むちゃくちゃにしないでくれ。
まじキレるよ。あんたのせいで仕事辞めて、その後再就職して、やっと仕事も順調に進みだしたってのに。
俺を潰したいの?
もし今度何か問題が起きて、俺が会社を辞めざるを得なくなったら、俺はあんたに何するかわからんよ。
正直「あ、これは殺されるな。」と思いました。
まぁこれも自業自得で仕方ないか…と諦めつつ、暫くは電車のホームの先頭に立つと後ろから突き落とされるんじゃないかと思い、無意識に足を踏ん張っていました。
彼とは暫くメールのやりとりをして、直接会って謝罪しないのなら警察に訴えるだの色々ありましたが割愛します。
それから数年後、彼氏から捨てられたとの報告が来ました。
風俗で働いていたのがバレたらしく、婚約破棄され実家に戻ったそうです。
その後も、女性が好きになっただの、父親から汚物を投げつけられる虐待を受けただの、色々な相談が来ましたが…、川本の実家は簡単に会える距離ではなく、僕にできるのは話を聞いてあげる事だけでした。
さらに数年経ち、川本は新しい彼氏ができて結婚。都心に引っ越しました。
いつからかは分かりませんが、人格が統合され「中村」という人格1つになっており、
僕との記憶がほとんど無くなっていました。
記憶喪失なんて嘘だろと思い、会って話をしました。
「中村は、僕の事覚えてないの?」
「うん。あまり覚えてない。」
「じゃあ、僕の事はどういう風に思ってるの?」
「うーん…『クーロンはとても良い人』と言う記憶はあるよ?」
「なんだそりゃw …僕とHしたのも覚えてないの?w」
「…え?そんな事する訳ないでしょwww」
「…前の彼氏の事はどう思ってるの?」
「ストーカー。大学の時から、いつも追いかけられてた。気持ち悪い。FaceBookも苗字変えないし、住んでる場所も知られたくないから住所を更新しないんだ。」
…なんでしょうね、この虚無感と言うか諸行無常と言いますか。
記憶が無くなったと言う事は、共有記憶も無くなった…?
…え?この運命って何?
あの時の思い出話すら、もうできないの?色々話したい事あるのに?
…まぁ、現在の彼女は幸せみたいです。
以前、川本とこんな会話をしました。
「何か辛い思いさせちゃったみたいだし、さき5には、きちんと謝りたいんだよ。」
「クーロンが謝る必要は無いよ。さき5は、もう出てこないんじゃないかな。出たいとも思ってないみたいだし。」
でもね、自己満足かも知れないけど、僕は彼女にきちんと謝りたいし、もう一度話をしたいんですよ。
もう、お互いに結婚もしているし、今更寄りを戻すだのそんな話をする気は毛頭無いけど、心の清算くらいはさせてくれよ、と。
でも、人格統合は人格同士の結論だろうし、もう、さき5は出てこないんだろうな。
その代わり、元気で明るくて、正直で純粋で、人を疑う事を知らないバカな彼女と、また新しく友達として始められる運命に感謝をしたいと思います。
川本編おしまい。
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あぁ…やっと書き終える事ができた…。
以前に書きまとめた物があるとは言え、相当なリライトをしたので結構大変でした。
川本編は、恋愛とは違うかも知れませんが、当時は驚きの連続で「事実は小説よりも奇なり」でした。
でも、当時の知人にこの話をしても信じてくれないし、相手にしてくれなかったんです。
「そんな変な奴とは関わらない方がいいよ」
「集団催眠みたいな状態なんじゃないですか?」
色々言われましたが、せめて自分くらいは信じてあげて、友達になりたいと奮闘したのがこの話です。
そして、現在の奥さんと知り合い始めの時、自己紹介的なノリでこの話をmixiに投稿していました。
彼女は最終話を読んで泣きながら言いました。
「川本さん、可哀そう…。クーロンがした事は間違って無いよ…。」
川本以外の人に言われて、なんか救われた気がしました。
それからこの話は封印をしていましたが、昨年にTwitterのフォロワーさんとやりとりをしていた時、ふと、この話を聞いてほしいなぁと思いました。
半分は自己紹介、半分は懺悔みたいな物ですね。
保存しているmixi版のテキストを送るだけではつまらないので、現在も含めた話をブログで書いてみようか、それなら少しずつ好きなだけ読めるだろうし、相手の負担にならないだろうと思ったのが、このブログを始めようと思ったきっかけです。
そうすると、その前の弥生さん編もあると面白いな、いやいや、まずは練習でそういうお店に行った事から書き始めてみようと言うのが最初の方の流れです。
…さて、順番的には奥さんとの話になるのですが、気分を変えて、しばらくはゲーム開発関連の話にシフトします。
恐惶謹言