書き置き
2-33話です。
怒りに任せても破綻するだけなので - クーロンの自分語りブログ
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「彼氏と川本は同じ考え?」
「いや、川本はOK出した身だから。…あぁ…やっぱ、ちょっと後悔してるかな…。彼氏を酷く傷付けてしまったから。」
後悔しているのならば、彼氏の神経を逆撫でする事も無いだろうし、とりあえずは一安心。
…ふと、さき5はどう思っているのだろうか、と思いました。
「さき5は、悩んでいると言うより、想いが叶って幸せなんじゃないかなぁ…。おそらく…、さき5が発生したのは、彼氏を待ってて寂しいと言う気持ちを消したかったからじゃないかなぁ…つまり彼氏じゃ無くなれば寂しくない、と。」
「そういうものなんだ。ちょっと分からないけど。」
「川本も何となくそう思うだけだけど…チャットも寂しいから始めたわけだし…」
「さき2が発生した時の、さき1の状況ってどういう感じだったの?それを全ての人格がきちんと理解するのが治療法の一つらしいけど。」
「さき1が生きていけないから、さき2に生活を任せた。さき1は、もう完全に精神世界の人。」
「なんで生きていけないようになったの?」
「辛くて…」
「何か辛い事があった?」
「うん…よく分かんないけどね;;あ、ごめん落ちるね。」
彼氏に何か呼ばれたのでしょう。
話すべき事を話さないまま、話が脱線し、その日はお開きとなりました。
それから数日経ち、川本の彼氏が会社を辞めました。
そして、川本より前に借りた株の本を返して欲しいと連絡がありました。
家の住所教えてくれれば郵送するよ、と言ったのですが、「いいじゃん、会おうよ」と強引に会う事を押し進められ、新宿で会う事になりました。
近況を聞くと、まぁまったりと暮らしている様子で、彼氏は川本達を題材にしたホームページの作成に勤しんでいるらしいです。
「でもさぁ…こんな風に会っているの彼氏にバレたら大変な事になるぞ?」
「大丈夫だよ、川本言わないもん。」
「川本が言わなくても、またさき2が出てきて言うかもしれないじゃん。」
「ううん、大丈夫。もう迷惑になるような事は言わないように決めたから。」
「決めた…?」
「決めたって何を?」
「パソコンの隣にメモ用紙を置いてあるんだけど、そこにお互い伝えたい事を書いておくの。もう皆に迷惑をかけるような事は言わない様にしようって、さき2の書置きがあったから、もう言わないと思うよ。」
「その用紙を彼氏がチェックする事は無いの?」
「うん、無いよ。川本の部屋汚いし、川本の部屋は彼氏片付けないから。」
「へぇ…。」
何が書いてあるのか、とても見たい…が無理だろうな。
人格間のコミュニケーションは皆無だと思っていたのに、これはとても意外でした。
「…それは、さき5が可哀想ですよ…。」
以前、さき2はこの発言の後消えました。
この時、どんな事を考えていたのでしょうか。
自分のした事を悔いたに違いありません。
でも、また川本に戻ってしまう以上、今思っている事をせめて書き残さないと、と必死に思いながら書いたのでしょうか。
さき2が出てこない以上、真相は誰にも分からず。
そして、さき2が出てくる条件を考えると、気が遠くなるような確率の低さになります。
四年ぶりに出現した人格。
出現するのは四年後か、また同等のショックな事を与えるか。
人格を変える目的でショックを与えるのは、絶対にやりたくない行為です。
そもそも人格が変わって喜ばしいと思った事は一度もありません。
それから暫くは、川本と特に会う事も無く、話すといえばメッセンジャーぐらいで、平和な日が続いていましたが、平和に甘えていたのが油断だったのかもしれません。
川本の彼氏は、心中穏やかでは無かったに違いありません。
仕事にやりがいを感じ、精一杯取り組んでいたのに、ふとした事で他の男に彼女を寝取られ(正確には違いますが)、彼女を守る為に退社。
いざ退社をしてみると、充分な貯金はあるので当初はのんびりしていましたが、先々の事を考えれば浪費はできないので生活を切り詰める事に。
数日経ったある日、「彼氏がちゃんとした謝罪が欲しがっている」と、川本から連絡がありました。
恐惶謹言
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