急転直下
2-25話です。
前回の話はこちら↑
それからは川本の人格も安定し、さき5・6が出てくる事は無く平穏無事な日々が続きました。
川本が猫を飼いたいと言い出したので、その相談に乗ったりGW中に皆でオフ会をしたり。
オフ会の時に、以前携帯のボイスレコーダーに吹き込んであったさき5から川本へのメッセージを聞かせ、お返しにさき5へのメッセージをと言う事で川本に吹き込んでもらいました。
お互いに声のメッセージをやりとりすると言うのは、とても新鮮だったに違いありませんし、後日さき5に聞かせるのを楽しみにしていました。
そんなある日、さき1の事について川本が言いました。
「クーロンの家でノルウェイの森を読めば、さき1が出てくるかもよ?会ってみたいって言ってたじゃん。」
「ノルウェイの森?」
「うん、小説なんだけど、以前ノルウェイの森を読んだら、さき1が出てきた。」
「ほお、そんなに衝撃的な話?」
何か、猟奇ホラーのような感じがします。
「いや、衝撃的では無いけど…自分の宇宙が見られたような気がする本。」
「???」
「自分の世界って言うのかな、なんか奥底に触れられた感じ。さき1を呼び覚ます感じ。」
大いに興味をそそられ、後日購入して読んでみました。
ネットでの評判通りで、文字を読むのが苦手な自分でもすんなりと読めてしまいました。
「活字をゴクゴクと呑めてしまう感じ。」
と、川本は言っていましたが、何となく当たっています。
ネタバレになるので、あまり詳しくは書きませんが、不思議な感覚のする本でした。
ただ、いくら川本がそう言っても、さき1が出てくる保障は無く、それだけの為に川本を家に呼ぶのも、後日さき5に嫉妬されそうなので、その計画は未遂のまま終わりました。
そして、GWも終わって数日後の夜。
メッセンジャーから川本の発言。
「こんばんは。」
いつもと違う口調。普通にこちらは返事をしました。
「お初にお目にかかります、さき2です。非常に言いにくいのですが…さき5とクーロンさんの関係を彼氏に話してしまいました。結婚するのに秘密を持つのはよくないと思ったので。」
ファwwwwww
消えた筈の、さき2が出現しました。
そして秘密にしておかなければならない事を、一番知られたく無い人に、しかも当人が話してしまった。
「彼氏的には、もう一線を越えなければ、今まで通り会ったりしていいそうです。」
「分かりました。」
どのように応対して良いのか分からないので、とりあえず敬語で。
「恐縮してません?」
「いえ、大丈夫です。さき2さんは、どのような経緯で出てきたんですか?」
「川本が引っ込んだので出てきました。」
「何かショックがあったとか?」
「さあ…私も突然のことだったのでよく覚えてないんです。」
「さき2さんが出てくるのは、すごい久しぶりですよね?」
「えーと…4年ぶりくらいですかね。」
何か「こち亀」に登場する、オリンピックの年にだけ起きるキャラを思い出します。
4年ぶりに「起きた」彼女は、その4年分の共有記憶をゆっくりと整理し、その中で一番重要な事として、さき5の行動を認識し、まずは彼氏に報告したのでしょう。
人格が違えば価値判断基準も違うと言う事です。
それより、さき2がどのような性格なのかを知らない事には話しようが無いので、色々聞いてみました。
「明日養成所ですけど、行きます?」
「ええ一応…興味無いんですけどね。」
さき5同様に、メイン人格には従わざるを得ないみたいです。
「川本よりは権力が強いんですよね?」
さき5もさき6も、川本より後に生まれた人格なので権力が弱いのは分かっていましたが、川本より先に生まれたさき2は一体どう思っているのか。
さき2が発生した事が果たしてどういう状況にあるのかは、今は分かりませんが、興味深く質問の返答を待ちました。
恐惶謹言
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