初めての電話
2-8話です。
「さき5」とのチャットを続けてみます。
前回の話はこちら↑
世間話の後、婚約者の話を聞いて驚いたのは、さき5は彼氏を「同居人」と呼ぶ事。
「同居人は川本の彼氏であって、私とはつきあってませんから。」
…ほ?つまり彼氏としては、「さき5」になっている時には「彼女」ではない女性が家の中にいる。
自分の彼女がもしそうだったら…と思うと、なかなかハードです。
あと、僕の事をどれぐらい知っているのか、と聞くと
「川本の記憶の中から、ある程度は分かっています」
チャットのメンバーの名前や、それぞれがどういう人なのか。
ほぼ川本が有している知識と同程度でした。
チャットの発言だけを見ると、全くの別人に見えます。
果たして口調は…?
試しに電話をしてみました。
「えと…、どうも始めましてw」
「始めまして、さき5ですw」
声は川本だ…、しかし口調が真面目だ…w
「ぃや~、本当に別人なんだね。…彼氏の事はどう思ってる?」
「彼氏じゃありません…、つきあってませんから。」
「じゃあ同居人の事はどう思ってるの?」
「素敵な人とは思いますけど…、でも私には好きな人がいますから。」
「!?」
メイン人格である川本の意に反して「好きな人が他にいる」との発言には正直驚きました。
「好きな人って誰?」
「…言えません。」
「言えない?僕の知ってる人?」
「…知ってると思います。」
「知ってる人?」
…誰だろう?
僕とさき5の共通の友人と言えば、チャットメンバーしかいない筈だし、そう考えると、一緒に声優養成所に通っているたっちゃんかな、と結論が出ました。
「たっちゃんなの?」
「…違います。」
あらら、違うらしい。
「じゃあ誰なの?」
「…それを言ったら告白になっちゃいますよ…」
告白?
…ま、まさか…と思いつつも外れていたら嫌なので更に聞いてみます。
「誰なの?」「言えません」を数回繰り返した後、
「本当に聞きたいですか?…クーロンさんです。」
「!!!」
暫し絶句。
なんで会った事も無い人を好きだなんて言えるんだろうとは思いましたが、この沈黙をどうにかしないと、と必死に考えた挙句
「あ、ありがとう。」
なんて気の抜けた言葉しか出ませんでした。
「私の事どう思ってますか?」
「どうって…川本には婚約者がいるし…。」
「…そうなんですよね…」
どうにもこうにも会話を弾ませる自信が無くなったのでチャットに戻る事にして、電話は打ち切る事にしました。
う~ん、どうしたものやら…と考えながら皆と雑談をしていると、「さき5」からメッセンジャーで発言が来ました。
「…ごめんなさい、同居人に私はクーロンさんが好きですって言っちゃいました。」
何してくれちゃってるんですか???
恐惶謹言
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