サインを決めよう
2-29話です。
とにかく直接会う理由があったのです。
前回の話はこちら↑
その日、夕方過ぎに新宿で川本と会いました。
「彼氏怒ってた?」
「怒っていると言うか、かなりショックだったみたい。」
「だろうなあ…チャットしてる時って、画面見に来たりするの?」
「うーん、あまり見ないけど、時々は来る感じかな。」
「だよね。でね、『彼氏が画面を見ている』と言うサインを決めたいんだよ。」
「サイン?」
「そう。彼氏が近くにいる時は、天気の会話をして。『今日は良い天気だね。』とか。
それで、いきなり天気の会話が不自然な場合は、語尾に「♪」を付ける。」
「うん、分かった。」
「あとさあ…、前聞こうと思ったんだけど、HするのOK出したの自分ってのは彼氏には言ってないの…?」
「え”…、言ってないよ?」
「なんか隠し事してると、どこかでツジツマ合わなくなるから、そこは正直に言ってみ?」
「…う~ん…分かった。」
これからは平々凡々とは思えない予感があるし、何かと意見のやり取りがあるかもしれない。
その時に自分が完全に悪役では正しい事を言っても、耳に入れてもらえないと思ったので、川本には可哀想だけど真実を言ってもらおうと思ったのです。
読んでいる貴方。こいつ悪い奴だなーと思いましたか?
そうです、腹の中なんてこんなもんですよw
その日の夜。
「彼氏にすごく怒られた…」とメッセージが来ました。
Hする事にOK出した事を正直に言った結果、『OK出すってどういう事?俺が傷つくって考えなかったの?』と、こっぴどく怒られたそうで、その後彼氏は会社を辞めようかなぁ…と、言い出しているそうです。
会社を辞めてもっと就業時間が楽な会社へ移り、川本と会う時間を増やし、二度とあんな事が起きないように、と。
「会社を辞めるのは、止めた方がいいんじゃない?」
「川本もそう思う。でも、ずっと一緒にいれば病気もよくなるかもって。」
「良くはなるだろうけど…新しい環境で、彼氏が大変そうだ。」
以前は散々会社を変える事を模索していた我々ですが、動機が動機なだけに複雑な気持ちです。
「会社辞めるの本気みたい。お前次第だって。お前が賛成なら、すぐにでも辞めるって。」
「うはー…、すぐにでもって、次の会社見つけてないだろうにどうするんだろ。」
「親からお金もらって生活。」
聞けば二人の親とも裕福そうなので、可能な話だとは思いますが…少しムカッとしました。
その日は、特にその問題に触れる事もなくお開き。
そして翌日。
「あのさ、ちょっと質問。」
唐突に川本からメッセージが来ました。
「クーロンがHしたのって、彼氏とチャットでさき5の好意に応じないって約束した後?前?」
先日決めたサインが無い…が、川本はこんな言い方しないし、おそらくこれは彼氏が川本に聞かせているであろう事はほぼ間違い無いと思いました。
「うーん…あの時期は色々あって順番覚えてないけどHの後だった気がする。」
「あとさ、もう一つ質問。」
…と、川本は次々に質問をしてきます。
さき5の事は好きか、さき5とはHしないか、などなど。
こんなに直球で聞けば意図も丸見えだろうに、と思いながら、曖昧で真摯な回答をしました。
彼氏が見ているかとか、心情が悪くなるような事は言えません。
おそらく、先日の会社を辞めると言う発言と時間経過から推測するに、だいぶ向こうでは混乱し、話し合いをしているように思えます。
アホみたいにチャットしていると、会話の内容や発言の時間などから、相手のリアルがどんな感じか読み取れるスタンドが発動するのです。
おそらく数十分前、会社を「辞める」と主張する彼氏に対し、説得する川本。
収集がつかなくなり、「じゃあ、あいつに直接聞いてみよう。」と。
そんな所でしょうか。
「とりあえず、それだけ聞きたかったんだ。ごめんね、突然。」
「いえいえ。」
そして川本はメッセから落ちました。
相当彼氏は意固地になっていると思われるので、メッセ越しでも説得は止めた方が良いと思い、あくまで知らないふりをしていました。
今にして思えば、逆に「辞めた方が良い」と言った方が良かったのかもしれません。
「悪」である自分がそう言うのなら、考えを変え、辞めないのでは無かったか。今ではそう思います。
そして翌日。
めずらしく早朝に川本からメッセージが来ました。
「何から話せばいいかな…とりあえず、彼氏が会社辞める事になったよ。今日会社に言うって。」
展開早いな、オイwww
恐惶謹言
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