了承を頂いた?
2-21話です。
川本とのチャットが続きます。
前回の話はこちら↑
「さき5は可哀相すぎる。」
「多分…、僕に彼女ができたと分かったら、さき5は出てこなくなると思う。それが良い事か悪い事かは分からないんだけど、川本は、ずっと想いを抱きながら過ごすんだよね。そう言う色々な事を考えたら、さき5の願いは断れなくて。
…と言うか…嘘ついててごめんなさい。」
「ううん。さき5の願いを受け入れてあげて。彼女が出来る迄でいいから。」
「なんか、それも複雑だなあw」
「ってか入れていいよ。」
「何を?」
「察して…。」
「はは…w」
それからは何か気が抜けてしまい、難しい話は終わりにして雑談を長々としましたが、やがて話はまた戻ってきてしまい今度は「さき1」の話題に移りました。
「さき1は生きるのを放棄した人。」
「生きるのを放棄した人格は消えてしまうものだよね?でも権力を持って存在していると言うのが分からない。」
「生きるのを放棄して、人格を別に作り出して、人任せに生活させてる。本人だから消えるハズが無い。」
「彼氏はその辺どう考えてるんだろう。」
「人格が統合するのが一番いい、と。」
「安定ではなく?」
「統合。」
「川本が全ての人格を統合する?そして、統合された人格が新たに形成される?」
「さき1が全ての人格を統合する。」
「それなら、尚更人格が増える要因になったチャットは控えるべきだと思うけどな。僕が彼氏ならそうする。」
「それは嫌ーーーーーー。」
「そして、仕事を変えるとかして、もっと川本といる時間を増やす。」
「仕事変えてくれないよ…お願いしてるけど。」
「チャットは所詮バーチャルな世界だから。」
「所詮って言わないで…。」
「いや、『所詮』だよ。大事な事はたくさんある。チャットが全てでは無いでしょ。」
「全てでは無いけど…。」
「…って、こういう話になると、さき5になるんだよな。」
「まだなってないよ。」
そして、その後は軽い雑談をして、お開きとしました。
翌々日の夜。
なぜかチャットルームに「さき5」がいました。
「え、どうしたの?」
「川本が彼氏に怒られたみたいです…。」
珍しい事もあるものです。
「あの、川本の彼氏が話したいって言ってます。」
ドキドキッ!
「はい。」と返答すると、間髪いれずに発言がきました。
「いきなりの質問でもうしわけないのですが、クーロンさんを信じてもよろしいでしょうか?」
怒られるのを半分予想していたのに、「信じてもいいですか?」と言う問いかけは何でしょう。
こちらが返答する前に続けて発言が来ました。
「つまり、さき5が付き合ってくださいといったら、どうお答えになりますか?」
向こうの状況が分からないけど、さき5が心配そうにディスプレイを覗き、彼氏がイラ立ちながらキーを叩いているのが想像できました。
そして、ショックを与えてまだ人格が代わるとややこしくなりそうなのでさき5に席を外し(やりとりが見えないように)てもらい、それから発言を始めました。
まず、付き合ってくださいと言われたら断る事、川本もさき5も彼氏が家にいなくて寂しい思いをしているので、会う事自体を断るのは辛いと言う事を言いました。
そして、転職は考えたけど収入面の事を考えると踏み切れない事、収入が不足すると、不安にさせてしまい病気を重くさせてしまう事等の返事が来ました。
「これからどうするのが最善だと思いますか」と聞くと、
まず会社の近くに引っ越す事を考えていると、そうすれば早く帰れるし、昼休みにも会える、と返事が来ました。
「いろいろとややこしい状態に巻き込んでしまって、申し訳ありません」
森さんも色々と思うところがあるみたいです。
とりあえずこちらが思っていた事は杞憂だったのですが…。
今回人格が代わったのは、チャットでは無いらしいのですが、それについて質問をしてみました。
「今日、帰ったらガラスが割れていて、それを少し怒ったら代わってしまいました。少しきつく言ってしまったので…。病状の一つなのですが、片付ける事が苦手です。なので私が帰るといつも部屋は散らかり放題で、片づけが帰宅後の私の日課になっています。」
チャットをする前に、肺が痛くて寝込んでいると言う川本からのメールがあったのを思い出しました。
「帰宅されるちょっと前に肺が痛んで寝込んでいたらしいので、タイミングが悪かったのかもしれないですね。さき5も、かなり出たがっている状態でしたでしょうし。」
「そうですね、どのさきも出たがっています。出てきてはじめてその時間を生きることができるのですから。」
「付き合い始めた時から、さき4までいたんですよね?」
「付き合い始めた時は、さき2迄です。つまり主人格+1人です」
「3と4は、どのようにして発生したんですか?」
「川本は、甘えたいという強い気持ちから発生した人格です。さき3は不明です、今もいるかどうかも不明です。」
今までは、「川本達」側からの意見しか聞いていなかったのですが、それを長年見守っていた側の意見を聞けたので不思議な気持ちです。
このような機会も滅多に無いだろうと思い、更に質問を続けてみました。
恐惶謹言
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